五感をフルに使って感じとる
機械を巡るひとびと VOL. 001
ヒデオさん
西日本鉄道
西日本鉄道を代表するマルタイオペレータ。
一つ一つの仕事を丁寧に遂行する姿は仲間たちからの信頼も厚い。機械を愛する心には敬服します。
2020年夏|犬塚基地にてインタビュー
五感をフルに使って、機械コンディションを感じ取る。
「機械を巡る人々」の記念すべき第一回は、西日本鉄道で保線作業にて、オペを務めるヒデオさんに、話を伺いました。
挨拶後、ヒデオさんはハニカミながら、毎晩不安を抱きながら作業に取り組んでいると話しだしました。そんな予期せぬ言葉からインタビューは始まりました。
ヒデオさん(以下、ヒデオ)夜間作業中、いつも不安を抱きながら働いています。20年以上マルタイの仕事に私は携わっていますが、どれほど経験を積み重ねてもこの不安を払拭できません。変な話かもしれませんが、この不安は無くすべきではないとも思っています。
――えっ!それだけ経験を積み重ねても不安に思うときがあるんですか。それは作業中の事故、例えば操作ミスによるマクラギ破損などへの不安ということですか?
ヒデオ:もちろんそれもあります。
「不安」と言いましたが、正しくは「何か不足の事態が起きるのかもしれないと考えること」です。
マルタイは全長20m以上の大きな機械ですが、トラブルはいつも小さなことから始まります。例えば1本のボルト緩みや、小さなホコリによる短絡。そしてそれに気づかないと、次第に事態は大きくなっていき、そしていつか大きな事故として突然現れます。
だからいつも何か本線上で起きたらどうしよう、と考えてしまいます。臆病だともいえますが、そう思っていつも気を付けていれば「何かが起きる前の予兆」を見つけ、事前に対処しやすくなると思っています。
――なるほど。「不安」をうまく利用して、自分の受け持つ仕事の完成度を高めていると感じました。具体的にはどんなことをしているんですか?
ヒデオ:そういわれると、答えるのが少し恥ずかしいですね。。。オペ席に座ったら、いつもと違う音がしないか、振動がおかしくないか、表示は正しい表示か、五感をフルに使って機械のコンディションを感じとるように心がけています。ちょっとエンジンが高音気味とか、左側の方が操作のリアクションが良いとか。機械のコンディションを判断するには、機械の「いつもの状態」を把握しておく必要があります。機械ごとに特有の個性もありますし。それも含めて機械をもっと知っておかないといけません。
――新しい機械08-1XSは不安を増やすことなく、安定して稼働していますか?
ヒデオ:(笑)もちろんです。年間作業日数240日以上、働いてもらっています。
この機械は弊社唯一のマルタイで、頼りになる相棒です。私も最高のコンディションを維持してもらえるように、メンテナンスするよう心がけています。安定して稼働してくれるので、私たちも作業に集中できます。
――ヒデオさんは20年以上、マルタイに携わっていると聞きました。最初の機械はどの機械でした?
ヒデオ:最初のマルタイは「Unimat Combi 08-275」でリフティングフックを装備している機械でした。継目の位置を考えながら、フックの位置を前後に移動させ、レール下にフックを潜り込ませ持ち上げるのが本当に楽しかったです。
自分たちでレールを持ち上げるのはかなり労力がかかるので、「機械の強さとその性能」に感動したことをはっきりと覚えています。
――ありがとうございます。最後に仕事をしている上でヒデオさんの必須アイテムを紹介してください。
ヒデオ:鉄道マンなのでこの腕時計かな。何をするにも必ずこの腕時計で時間を確認します。ガンガン使っても壊れないので愛用しています。
作業後にヒデオさんたちは始発に乗車。走行快適性を自ら確認し終えた瞬間が一番ホッとできる瞬間で、やりがいを感じる時間だそうです。オペ自ら線路の仕上がりを確認できる職場はなかなかありません。
また取材時には少ない人数でテキパキと作業をこなす西鉄チームが印象的でした。五感を使って機械としっかりつながっている、そう感じました。幸せな気持ちになったインタビューでした。
会社:西日本鉄道 設立:1912 年 主線:天神大牟田線 路線総延長:75km 最高速度:110km/h 最終電車:犬塚駅 00:20発 始発電車:犬塚駅 05:20発 | 機械名:08-1XS 機械番号:7007 導入年:2020年 全長:17400mm 重量:56.3t 一晩の作業距離:600m |